皆さんは、映画『日日是好日(にちにちこれこうじつ)』という作品をご覧になったことはありますか?
お茶のお稽古を通して季節の移ろい、人との関わり、自分自身の心の揺れと向き合っていく姿が丁寧に描かれたこの映画。今回は、この作品が教えてくれる「学びの場が人生や価値観にもたらす変化」について、思いを巡らせてみたいと思います。

同じ時間を重ねていくということ
黒木華さん演じる主人公・典子が、お茶のお稽古へ通い始める場面。最初はぎこちない所作や慣れない動きが、少しずつ身体の感覚として積み重なっていきます。
お点前を繰り返し、季節の和菓子をいただき、樹木希林さん演じる茶道教室の武田先生の前に座る――。
その時間は、決して華やかな「成長物語」ではありませんが、静かに心の内側を整えていきます。
武田先生の佇まいが教えてくれること
武田先生は多くを語りません。
答えを急かすわけでもなく、教えを押しつけるでもなく、ただその場に在る。
その静かな佇まいは、決して派手ではないのに、典子の中に小さな変化の種を静かに落としていきます。
映画の中で、それは一言の助言や、動作を見せる一瞬として表れるのではなく、何気ない空気の流れそのものとして伝わってきます。

変化は日常の中ににじみ出る
物語が進むにつれて、典子の日常の景色や感じ方は、少しずつ変わっていきます。
床の間の花に、自然と目が向くようになる
雨音に耳を澄まし、風の気配を感じるようになる
何気なく過ぎていく日々を、大切に思うようになる
大きな出来事が起こるわけではないのに、日常の一つひとつの瞬間が深くなっていく感覚。
それは、単純に「上達した」と感じる喜びとは違う、暮らしそのものの厚みが増していくような感覚です。
続けることの静かな意味
この映画が特に印象的なのは、「わかるまで続ける」のではなく「わからないままでも、続けてみる」という姿勢の価値です。
最初はぎこちなかった所作が、ふとした瞬間にスッと身体に馴染む――
そんな経験は、学びの時間を味わった人ほど覚えている感覚かもしれません。
学びとは、即効性のある答えを得ることではなく、時間を味方につけて自分の中に積み重ねていくもの。
その積み重ねが、いつの間にか「習いごと」を超え、人生の一部として根を張り始めることもあります。
いつでも残り続ける学びの場
同じ場所、同じ動作、同じ時間を繰り返すことは、人それぞれ違う意味を持つものです。
忙しい日々の中で、黙々と所作を重ねる時間が救いになる人もいるでしょう。
ふとした一言に背中を押される瞬間を覚える人もいるでしょう。
学びの時間は、人生を劇的に変えるものではないかもしれません。
けれど、積み重ねた時間は、自分が自分に戻るための場所として、心のどこかに残り続けます。

日日是好日とは、学びの時間が日常に根づくこと
『日日是好日』という言葉は、特別な一日だけを指すものではありません。
調子のいい日も、気持ちが揺れる日も、淡々と続いていく日々そのものが尊い――そんな教えです。学ぶ時間は、成果や上達だけでは測れない価値を、私たちの暮らしの中にそっと残してくれます。
今日もまた静かに続いていく時間の中で、それぞれの「学び」が、皆さんの日常を少しずつ豊かなものにしてくれますように。
『日日是好日』予告編
執筆:日本和装オンライン運営