
夏の着物は、美しく季節を楽しめる反面、暑さとの付き合い方も大切になります。
暑さをなくすことはできなくても、素材や小物を工夫することで、着心地や過ごしやすさは変わります。
着物は、絹や麻、木綿など、自然の恵みから生まれた素材を大切にしてきた日本の文化です。
それは着物だけではありません。実は、夏の和装小物にも、天然素材ならではの知恵が息づいています。
天然へちまを使った前板や帯枕、さらりとした履き心地が魅力の麻足袋。
これらは、日本和装オンラインでも、この夏多くの方に選ばれている人気の和装小物です。
人気の理由をたどっていくと、そこには日本の風土に寄り添いながら受け継がれてきた、天然素材ならではの魅力がありました。
今回は、夏の着物時間を支える二つの天然素材、「へちま」と「麻」に注目し、その魅力をご紹介します。
天然素材① へちま
昔から暮らしを支えてきた、日本の知恵が詰まった植物

「へちま」と聞くと、夏野菜を思い浮かべる方も多いかもしれません。
実はへちまは、日本では古くから「食」「美容」「暮らし」「薬用」と、さまざまな場面で活用されてきた植物です。
若い実は食材として親しまれ、成熟した実は繊維だけを残して「へちまたわし」に。さらに、茎から採れるへちま水は「美人水」とも呼ばれ、江戸時代には化粧水として庶民に広く親しまれました。民間では、のどの不調や咳を和らげるためにも用いられてきたと伝えられています。
このように、へちまは一つの植物を余すことなく暮らしに生かしてきた、日本人の知恵を象徴する存在でもあります。
和装小物に使われるのは、成熟した実から取り出した天然繊維です。

スポンジ状の繊維は、内部にたくさんの空気を含み、驚くほど軽く、ほどよい弾力があります。さらに通気性にも優れているため、昔から夏の帯まわりを支える素材として重宝されてきました。
自然が生み出した素材だからこそ持つ機能性。その価値は、現代でも変わることなく受け継がれています。
帯まわりを支える「天然へちま前板」
帯まわりは、着物の中でも熱や湿気がこもりやすい場所です。
天然へちま前板は、帯の形を美しく整えながら、軽やかな使い心地も魅力。
長時間着物を楽しみたい方や、夏のお出かけが増える季節だからこそ、多くの方に選ばれています。
軽さが魅力の「天然へちま帯枕」
帯枕は、一日中帯を支え続ける大切な和装小物です。
天然へちまならではの軽さと適度な弾力は、お太鼓の形をきれいに保ちながら、帯結びをやさしく支えてくれます。
昔から受け継がれてきた素材だからこそ、今もなお多くの着物愛好家に支持され続けています。
天然素材② 麻
日本の夏に寄り添ってきた、涼やかな天然繊維

麻は、植物の茎から採れる天然繊維です。
日本では一万年以上前の縄文時代から衣類や縄、布などに使われてきたとされ、絹が広まる以前から人々の暮らしを支えてきました。
麻の最大の特徴は、水分をよく吸い、すばやく放出すること。さらに繊維の中に熱がこもりにくく、肌に触れたときのひんやりとした清涼感も魅力です。
そのため、夏着物や長襦袢、のれんや暖簾など、日本の暑い夏を快適に過ごすための素材として古くから親しまれてきました。
暑さが厳しい日本だからこそ育まれた、自然の恵みを生かした知恵といえるでしょう。
足元から夏を支える「麻足袋」
着物姿で歩くとき、足元は思っている以上に汗をかきます。
だからこそ、夏は足袋の素材選びも大切です。
麻足袋は、麻ならではのさらりとした履き心地が魅力。
見えない部分だからこそ、天然素材の心地よさを実感しやすい一足です。
夏着物はもちろん、浴衣にも合わせやすく、毎年この時季に人気を集めています。
まとめ
天然素材には、選ばれ続ける理由がある
今回ご紹介したのは、「へちま」と「麻」という、日本の暮らしや和装文化の中で長く親しまれてきた天然素材でした。
どちらも新しい素材ではありません。
それでも今なお選ばれ続けているのは、日本の気候や暮らしに寄り添いながら、その機能性が受け継がれてきたからです。
着物が絹という天然素材の美しさを大切にしてきたように、和装小物にもまた、自然の恵みを生かした知恵が息づいています。
今年の夏は、小物にもぜひ目を向けてみてください。
天然素材ならではのやさしい使い心地や、日本の風土が育んだ機能美に触れることで、夏の和装時間がより豊かなものになることでしょう。
執筆:日本和装オンライン運営


