受講者が最初に抱く素朴な疑問にじっくり答えてみたいと思います。

着付け教室に通い始めた方が、最初によく口にされるのがこんな質問です。
「今持っているベルトを使いたいんですけど…」
「紐でも大丈夫ですか?」
「小袖ベルトって、本当に必要なんですか?」
昔からの紐や、すでにお持ちのベルトを使いたいと思うのは自然なこと。新しい道具をすすめられると「どうして?」と感じるのも無理はありません。納得したうえで揃えたい、というのはとても大切な気持ちだと思います。
そこで今回は、アイテムとしての進化や具体的な使い方、メリットについて、じっくり丁寧にご説明します。前後編に分けてまとめていますので、ぜひ両方ご覧ください。
紐から始まった着付けの道具の進化
まず少し、着付けの道具の歴史を振り返ってみましょう。
着物を着るための基本の道具は「紐」です。とてもシンプルで、応用範囲も広いのですが、結ぶ位置や力加減にコツが必要で、初心者さんには「苦しい」「緩んでしまう」といった不安がつきものです。
身近なものを例にあげてみても、最近は紐を結ぶ機会が格段に減ったと思いませんか?洋服はボタンやファスナー、ゴムで調整できるものがほとんどですし、靴も昔のような紐靴ではなく、マジックテープやスリッポンタイプが主流になっています。そのため、手先を使う機会自体が少なくなっていて、実際に紐結びができない子どもたちも増えているんです。便利になったぶん、器用さを使う場面が減ってしまった、ということですね。
コーリンベルトの登場

その不便さを補うために登場したのが「コーリンベルト」です。クリップで衿を挟んでゴムで支えることで、「紐だと崩れやすい衿元」を簡単にキープできるようになりました。一時は一気に普及し、多くの方が愛用するようになったんです。
でも、ここでひとつ問題がありました。「もっと快適に」「もっとラクに」「もっときれいに」といった声は絶えなかった・・・。
なぜかというと、コーリンベルトは背中越しに両衿を挟む構造なので、その上からさらに紐や伊達締めで胸元を抑える必要があったからです。結果として、小物の数が減るわけでもなく、胴回りの圧も解消されないまま残ってしまっていたんですね。
こうして生まれた小袖ベルト
そこで考えられたのが、今の 小袖ベルト(コーリンベルトしっかり) です。
紐→コーリンベルト→小袖ベルトと進化してきたこの道具は、従来は複数の小物で分担していた役割を、たった1本でまとめてこなせるように作られています。

その結果、
・小物の数がぐっと減る
・胴回りもラクになる
・着付けにかかる時間も短縮できる
さらに、小袖ベルトなら体に合わせたゴムの長さを調整してしまえば、毎回決まった位置にクリップを留めるだけで、長襦袢も着物もあっという間に着ることができてしまう・・・。これで人気が出ないわけないですよね?
ちなみに、業界でいち早くこのベルトを採用したのが日本和装の着付け教室です。
「器用さ」と「時短」、どちらを選びますか?
もちろん、「私は器用だから紐でも問題ない」という方もいるでしょう。でも、多くの方が着付け教室に通う理由は、やっぱり「もっと早く、きれいに、ラクに着られるようになりたい」からですよね。そして、初めて着付けを習う方は不安げにこうおっしゃいます。
「私、不器用なんですけど大丈夫でしょうか?」 と。
小袖ベルトはそういった不安を解消し、願いを叶えてくれる魔法のような道具。
今まで衿元にかけていた時間や労力を減らすことで、最大の難関とされる帯結びに意識と時間を使うことができる。効率を上げつつ、きれいな着姿になれるのは、本当に本当に嬉しいメリットです。そう思いませんか?
次回の 後編 では、小袖ベルトの具体的な使い方や、紐やコーリンベルトとの違い、さらに便利に使うコツまで詳しくご紹介します。
執筆:日本和装オンライン運営